サステナブルな酒造り
日本酒をつくる酒蔵の継承と発展は、日本の歴史、伝統、文化などの理解のために欠くことができないものであると考えています。しかし、1973年をピークに日本酒の需要は長期低落傾向にあります。この問題に対して、当社はクオリティーの追求という限定された目的のためだけでなく、持続的生産にも目を向ける必要があると考えました。具体的には、環境価値と経済価値を両立することにより、酒蔵の継承と発展につなげようというものです。
気候変動による影響
世界的な問題となっている環境汚染や地球温暖化。特に地球温暖化の問題は深刻で、日本酒の原材料となる酒米の調達が危ぶまれています。私たちにとって、高品質な酒米を、大量に、安定的に、長期的に調達できるかどうかは、事業継続の生命線となります。当社においても、気候変動が事業に与える影響を踏まえ、酒造りにおける気候変動対策への検討を重ねてきました。
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主要原料である山田錦などの酒造好適米の収量が減少した場合、財務インパクトが大きく、事業継続に関わる
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深刻な水不足により農地や酒蔵が影響を受け、事業継続が難しくなる可能性がある
グリーン・イニシアティブ
当社は、「環境負荷をかけずに、おいしい日本酒をつくる」ことをパーパス(企業としての存在意義)とし、2030年に向けたグリーン・イニシアティブ「Sustainalility Journey」(サステナビリティへの旅)を策定しました。SDGsに明示されているとおり、地球環境は多くの課題を抱えています。そうした課題の中から、私たちが優先的に取り組むべき重要な分野を「脱炭素社会」「循環経済社会」「自然共生社会」の3分野に定め、様々な取組みを行っています。
気候変動においては、2050年までにバリューチェーン全体の二酸化炭素排出量ネットゼロを掲げています。2030年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化を目指しており、脱炭素社会構築へ向けてリードしていくよう取り組んでまいります。
当社は、すべての直接事業において100%再生可能エネルギーを使用すること、そしてリサイクル可能(ビン)、再利用可能(酒粕)、FSC認証パッケージングを100%使用することなど100%持続可能な製法で日本酒を醸造しています。
また「酒づくりは米作りから」のサステナブルデザインにより、農家が持続可能な農法を導入することを支援しています。特にドローンを活用したイネの生育状況把握は画期的であり、人の目で確認していた育成観察をドローンによるリモートセンシングにより効率的に行えるようになりました。この結果、田んぼへの施肥もピンポイント、且つ最適な施肥量に抑えることが可能となりました。節水能力の高い醸造機器を使用することで日本酒の優れた品質を維持しながら製造工程で使用する水の量を大幅に削減。売上の一部を寄附することによる六甲山の環境保全活動を継続します。今後も当社は、「環境負荷をかけずに、おいしい日本酒をつくる」という思いを、バリューチェーンに関わるすべての人々と共につないでいくために、様々な社会課題に対する取組みを積極的に進めてまいります。
世界初カーボンゼロの日本酒
当社は、世界で初めて(※1)日本酒を造る工程においてカーボンゼロ(二酸化炭素( CO₂ )排出量が実質ゼロ)(※2)を達成し、フードサプライチェーンにおける脱炭素化実現に貢献しています。
醸造工程で使用する全ての電力を再生可能エネルギー(スコープ2)に切り替え、ボイラーの燃料を重油・灯油からカーボンニュートラルな都市ガス(スコープ1)へ転換することで、日本酒製造におけるCO₂排出量を実質ゼロとすることができました。
※1 当社調べ
※2 「サプライチェーン排出量」のスコープ1およびスコープ2が対象。
「サプライチェーン排出量」については下記サイトをご参照ください。