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六甲テロワール(六甲山の気候・風土)

福寿の酒蔵がある神戸・六甲山の麓は、美味しい酒造りに必要な気候・地形・土壌・水など全てに恵まれた豊かな土地です。六甲山系がもたらす神秘の名水「宮水(みやみず)※」、その裾野で実る最高品質の酒米、灘酒に命を吹き込む寒風・六甲おろしなど、当蔵は江戸時代から十三代にわたり270年を超えて受け継いできた伝統と革新の酒造りによって更なる高みを目指しています。福寿のひと雫は、六甲山の恵みと人の情熱がもたらす結晶といえます。

​※ 江戸時代後期に摂津西宮(現西宮)と魚崎(現東灘区)で造り酒屋を営んでいた山邑太左衛門(やまむらたざえもん)が二つの蔵で醸す酒の微妙な味わいの差に気づきました。酒米を同じにしたり杜氏を入れ替えたりしましたが、出来が良いのは常に西宮にある蔵でした。そして1840年、最終的に水を入れ替えた酒造りにより、その違いが水の違いによりもたらされるものだと判明しました。その後、灘の酒蔵家は競って西宮の水(今の宮水)を使うようになり、日本一の酒の銘醸地として全国に名を馳せるようになりました。

六甲山がもたらす伏流水​

六甲山は、年間降水量が多い為、急峻なミネラル分(リン・カリウム・鉄)を豊富に含む札場筋(ふだばすじ)伏流と法安寺(ほうあんじ)伏流が、酸素を多量に含む戎(えびす)伏流と混ざることで酸化鉄として理想的なまでに「鉄分」が取り除かれた水へと変化するのです。これが宮水と呼ばれる灘の酒造りを支えた神秘の水の正体です。日本の名水百選であるこの「宮水」は、西宮市のわずか数百メートル四方にだけ湧き出ています。

宮水には、リンやカリウムが平均的な井戸水と比べて多量に含まれています。このリンやカリウムは、酒造りで肝要な「麹」及び、「酵母」の好む栄養素であり安全で力強いアルコール発酵を促進します。その結果、キレがあり、コクもある俗にいう「男酒」と呼ばれる灘酒の魅力的な味わいが生み出されるのです。福寿の持つ「ふくよかで芳醇な味わい」はこの宮水から大きな影響を受けています。

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鉄分は、風味を劣化させるため、酒造りには鉄分が少ない水が理想的とされています。加えて、鉄分含有量が少ない水で醸された酒は、和食では欠かせない魚料理、特に寿司や刺身といった生魚を使った料理とのペアリングの際に大きな力を発揮します。酒に使われる水に含まれる鉄分が少ないと魚が持つ鉄分や酸化した脂と反応しないため、生臭いニュアンスを感じさせず、素材の旨味を引き出すのです。

当蔵は、近年理想的な味わいを求め新たな挑戦を行ってきました。様々な工程で「水の力」を活かしつつ特にこの神秘の水である宮水にその他複数の水をブレンドし、口当たりのまろやかさやふくよかさを感じることができる酒造りに挑んでいます。福寿の酒が「凛とした骨格」、「まろやかで優しい口当たり」、そして「ふくよかで芳醇な味わい」とお客様から表現されるのは、六甲テロワールの恵みとそれを活かす蔵人達の知恵と技術の結果なのです。

高品質な酒米が生まれる土壌

日本一の酒米の生産地が位置するのは六甲山の北側(以後、裏六甲)です。六甲山系とは地殻変動と隆起によりできあがった、標高931メートルの最高峰を頂とする、東西に30㎞余りに連なる山系。全山が1億年前の中世代白亜紀に生まれたほぼ混じりけのない花崗岩で形成されています。100万年以上前に六甲山系を隆起させた大地殻変動(六甲変動)以来、幾度となく地殻変動に見舞われ、花崗岩に多数の断層が生じ、これが風化して砂や粘土に分解されました。

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この分解された花崗岩は裏六甲に広がる米作地帯の土壌に大きな影響を与えています。この土壌には、その花崗岩由来の「モンモリロナイト(写真)」と呼ばれる粘土質の鉱物が多く含まれています。この鉱物は、稲の成長や良質な味わいを形成する為に欠かせない肥料であるカリウムや石灰、マグネシウムなどを豊かに保持します。その結果、稲の健全な成長を促し、粒の大きい良質米の生産につながっています。

モンモリロナイト(花崗岩由来の鉱物)

水田は、粘土層と砂土(さど)層が交互に重なっています。中でも強粘土層は水を逃さない上に、根の成長を促進させ、この地で育まれる背丈の高い山田錦の倒状を防ぎます。

酒米の栽培に適した気候

裏六甲は、雨の多い六甲山の北側(以後、表六甲)とは異なり、おだやかで晴れの多い瀬戸内海式気候です。年間を通じた日照時間は、1,850時間で平均気温は14.4℃、そして、年間降水量は1.198mlとなっています。標高が50〜200メートルの山麓や東西に伸びた谷あい(幅は約200m)に水田が広がっています。夏の夜には瀬戸内海から暖かい風が北上しますが、六甲山にさえぎられ、夜の気温は上がりません。そのため、米が熟れだす「登熟期(とうじゅくき)」における昼夜の寒暖差は10℃以上となり、品質の高い米が育つ環境が整っています。

六甲山の裏手からの写真.JPG

六甲テロワールから生まれる酒米、山田錦

酒造りでは、3つの特徴を持つ米を重宝します。まず、精白した(米の表面の糠を落とし磨くこと)米を使うことから、米が大粒であることが重要です。1,000粒の重量である千粒重という指標がありますが、山田錦は、25g~29gであり、一般米のコシヒカリと比べて約5gも重いことが知られています。

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心白と呼ばれるでんぷん質

二つ目は、心白(写真)と呼ばれるでんぷん質部分です。心白はが白く見えるのは、隙間が生じているためで、麹をつくる際には麹菌が菌糸を伸ばすのに好都合です。山田錦の心白は大きさや形状、共に完璧ともいえる性質を有しています。麹菌は菌糸を伸ばす際に酒造りに必要な酵素を生み出しますから、よい心白はよい麹づくりを行うために欠かせません。

心白と呼ばれるでんぷん質

最後は、低タンパクの米であることです。タンパク質は米の外側に多く含まれており、うまみ成分であるアミノ酸の元になります。しかしながらタンパク質が多すぎると味わいが「くどく」なり、雑味が増してきます。山田錦はタンパク質含有量が他品種より低いことから、生み出されるお酒は雑味がなく、気品のある味わいを得ることができます。

 

これらのすべての理想条件を兼ね備えている山田錦を用いた当蔵の酒造りには、六甲テロワール、そしてその恩恵を受ける水田が密接に結び付いています。福寿の醸造技術と山田錦が相まって「ふくよかで芳醇な味わい」「凛とした骨格」が実現されています。

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